プロ

先日、某外国ドラマの吹き替え収録に行って参りました。

 

わたくし、たまに声優さんになります。

 

声優の現場に行くと、まず始まるのが、挨拶合戦。

ひとつの狭い部屋の中で、一日中ともに過ごすわけですから、これがとても大事なようです。

皆さん声優さんですから、男女問わずとても艶のあるセクシーな声で、しばらくは挨拶が部屋中響き渡ります。自分も負けじとなるべく野太い声で挨拶を返そうとしますが、慣れないもので、逆に裏返っちゃったりして、まずここが第一関門となっております。

 

次にマイクの争奪戦。

これが皆さん苦労されているところかと思いますが、3~4本しかないマイクに対して、声優さんは15人くらい。当然入れ替わり立ち代りマイクに入らなければならず、ここが第二の関門となっています。一言ずつで大人数が出るシーンでは、まさに曲芸のように声優さん方が入れ替わっていて、見ている分には見事なのですが、やる側にとってはヒヤヒヤものです。

 

そんなこんなで、デリケートなわたしには、声優の現場はなかなかハードで、いつもかなり緊張してしまいます。

 

しかも今回は、久々に長い台詞があり、これまた緊張。さらに今回の演出家さん、とっても注文が厳しく、新人の声優さんが目の前でかなり叩かれていて、こっちは必死で平静を装いましたが、「平静に平静に」と思えば思うほど心臓がバクバク鳴ってコントロール出来なくなってくるのです。

 

わたくし、恥ずかしい話、未だに声優の現場で手応えを感じたことがありません。いつも、うまくいったのかいなかったのかよく分からないままに仕事を終えておりました。(要するにうまくいってないのでしょう…)

 

「今回は、ついに引導を渡されてしまうのか…」大げさですが、ほんとにそこまで考えてしまいました。

 

ついに自分の出番。

 

「今回は、いつに増して稽古を重ねた役。やることはやった。もし、全否定されても死ぬわけじゃない。思い切ってやろう!」とこう吹っ切れたのは、実は自分の役が話し始める2秒前でした。

 

結果は?

 

…ふたを開けてみると、「え?」と思うくらいすんなりと通ってしまいました!この時の嬉しいこと嬉しいこと!!

 

情けないですが、俺にとってはまさに命を削るかのようなヒヤヒヤ体験でしたが、プロの現場でやっていくというのはこの連続なんだなぁ、と改めて思い知らされました。

 

ただ、今までわけの分からないままやっていた声優ですが、精神面でも技術面でも、これからやっていくうえでのひとつの指標のようなものが(まだまだうっすらですが…)見えたような気がします。

 

これまで声優の現場に立った回数を考えると…、今更ながら自分の不器用さにはビビリます…。